HOME > 行ってみよう! > 獅子舞〜天園ハイキング
獅子舞〜天園
ハイキング
天園ハイキングコースは、
鎌倉のまちの三方を囲む山の稜線をたどる道。
鎌倉アルプスとも呼ばれ、
鎌倉の地形と自然を体感するのに、もってこいのところです。
瑞泉寺〜建長寺間を歩くコースがよく知られていますが、
途中に分岐点があり、複数の場所に抜けることができます。
ここでは紅葉の美しい獅子舞から、天園、大平山を経て
建長寺に降りる道をご紹介しましょう。
【大塔宮バス停】
まずは鎌倉駅からバスに乗り、大塔宮バス停で下車。大塔宮は鎌倉宮とも呼ばれ、鎌倉幕府倒幕を企てた護良親王が幽閉された土牢のある神社です。トイレや地図、売店があるので、ここで身支度をしていくといいでしょう。鳥居の前を通って北上し、突き当たりのT字路を左折します(右折した方の道は瑞泉寺に通じます)。
【永福寺跡】
左側に現れる広い草原は、永福寺跡。かつて源義朝が、戦死した義経ら武将の魂を鎮めるために、ここに平泉の中尊寺を模して荘厳な寺院を建立したといわれます。応永12年(1405)に火災で消失し、今はその面影もありません。昭和41年に国の史跡に指定され、近く寺院跡の復元が予定されています。平成14年には、鎌倉時代の林の様子を再現するため、周辺の斜面にクロマツやヤマザクラが植えられました。
【亀ガ淵】
かつて、この辺りの耕地をうるおしていた二階堂川に沿って右前方へと進み、山道に入りましょう。森からしみ出た水が小さな流れをつくり、足元はいつもぬかるんでいます。ここは、亀ガ淵と呼ばれるところ。浸食を受けた岩が階段状になり、小さな滝が幾重にも連なっています。鎌倉市緑のレンジャーの子どもたちが、ここで生物調査をしたときには、スジエビの仲間やサワガニ、オニヤンマのヤゴ、海と川とを行き来するヨシノボリやその卵まで見つかりました。
【獅子舞】
奥へと進むと、獅子舞と呼ばれる斜面に出ます。鎌倉の森では常緑樹やコナラなどの木が多く、まとまった紅葉が見られる場所は、社寺を除いてあまりありません。こうした中、獅子舞ではモミジが多く見られます。12月上旬〜中旬には谷一帯が紅葉し、赤や黄色の錦絵のよう。イチョウの葉が地面に散り敷くと、辺りは黄金色の落ち葉のじゅうたんのようになります。中国原産のイチョウがあるところを見ると、これらの木は植えられたものかもしれません。
【天園】
坂道を登りきって岩塊の上に立つと、パッと視界が開けます。天園に到着です。相模湾や鎌倉の市街を一望でき、六国峠とも呼ばれています。今回のコースでは西の方向へ進みますが、いくつかの方面への分岐点になっており、南に進めば瑞泉寺へ、北へ進めば横浜方面に出ることができます。機会があれば横浜自然観察の森に抜け、ビジターセンターで自然について学んでみてはいかが。三浦半島から、鎌倉を経て横浜・町田方面へと連なる緑地の広がりを体感できる、「緑の回廊」の要の場所です。
【大平山】
天園から西の広々とした尾根を行くと、巨大な岩盤が、目の前にそびえ立ちます。標高159.2メートルと、市内で最も高い場所にある、大平山です。鎌倉では岩盤の上を歩くコースは珍しく、鎌倉アルプスと呼ばれる理由も分かる気がします。ただし傾斜はゆるやかで、侵食によって岩に刻まれた階段を登り下りする子ども連れや、段の上でお弁当を広げる人々の姿も見られます。ここは、まちの三方を囲み、古都鎌倉を敵の侵入から守ってきた山並みの上。市街地の中心部を見下ろしながら、鎌倉に都を築いた頼朝の思い、自然の地形を利用してきた人々の歴史に思いを馳せてみましょう。
【森と樹木】
山道の途中にはスギやヒノキのほか、コナラやクヌギ、ヤマザクラなどの林があり、中には株立ちになっている木も見られます。かつて人々が、幹を切って利用し、次の代のわき芽を育てる「萌芽更新」を行っていたころの名残です。鎌倉の山々も、昔はマキをとるなど、日々の生活の中で利用された里山でした。子どもたちの大好きなカブトムシやクワガタなど、人々の手入れによって成り立ってきた落葉樹の林に、適応した生き物たちも少なくありません。
こうした中、旧鎌倉府を自然の城壁として守ってきた丘陵は、古都保存法による歴史的風土保存区域や特別保存地区などの指定がなされています。伐採などが制限されたこともあり、木々が大きく茂り、光が差しにくい場所でも生育できるスダジイやヤブツバキなどの常緑樹が多く見られます。
先ほどの獅子舞以外の森では、赤や黄色に紅葉する木はあまり多くありませんが、ところどころでハゼの赤い葉や、イヌビワの黄色い葉などが見られ、秋を感じさせてくれます。
【鷲峰山・十王岩】
西へ進むと、右手の小高い茂みの中に薬師如来像が見えます。ここは、覚園寺の裏山、鷲峰山の頂上です。鷲峰山という名は、釈迦説法の地として名高いインドの山になぞらえ付けられたといいます。像の下のやぐらには、首が破壊された石像が数体並んでいます。少し進むと、覚園寺方面への分岐点へ出ます。鎌倉駅に戻りたい場合は覚園寺側へ下ると便利です。
ここでは建長寺を目指し、さらに西へ進みます。尾根を歩いていくと、道のわきに、休憩にちょうどいい岩塊があります。ここは十王岩といい、上ってみると、かながわの景勝五十選にも選ばれた景色を望むことができます。横に立つ岩の表面には、像が三体並んで彫り込まれています。昔、夜に奇声を発したという、わめき十王像です。表情も分からないほどに風化しており、不思議な伝説があるのも何やらうなずける感じがします。
【勝上山】
さらに西へ進むと、勝上山の展望台へ出ます。鎌倉では、丘陵にひだのように入り込む谷間、「谷戸」の地形が多くみられます。この地形を利用して寺院や神社、武家の屋敷が建てられるなど、谷戸を中心にまちが発展したともいわれています。眼下の谷底一帯に広がる建長寺を見ていると、独特の地形利用の仕方を実感できます。
【建長寺】
見晴らしを楽しんだ後は、天狗像が並ぶ半僧坊を下っていきましょう。建長寺は、鎌倉五山の第一位。建長5年(1253)、北条時頼によって建てられた、日本で最初の禅宗の専門道場です。境内には、モミジやイチョウなども植えられています。森林に自然に生える植物と、人の手ではぐくまれた植物の違いを意識してみると、自然へのまなざしが、より深いものになるかもしれません。
山門を出たら、鎌倉街道を西へ進むと北鎌倉駅へ出られます。秋の1日、自然と人の歴史に思いを馳せて歩けば、鎌倉の景色が、一段と奥深く見えてくることでしょう。
【交 通】鎌倉駅よりバス→大塔宮バス停下車
【行 程】大塔宮:鎌倉宮(15分)→永福寺跡(5分)→分岐を右折(10分)→獅子舞(1時間)→大平山(30分)→覚園寺への分岐:百八やぐら(徒歩10分)→十王岩(徒歩10分)→勝上山(徒歩10分)→半僧坊(徒歩10分)→建長寺(徒歩15分)→北鎌倉駅
【トイレ】鎌倉駅、鎌倉宮、大平山、建長寺にあり
※引用文献…鎌倉市教育研究所編,2000.『かまくら子ども風土記』.鎌倉市教育委員会