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散在ヶ池森林公園


 散在ヶ池森林公園は、
かつて大船千石いわれる水田を潤した、ため池の跡。
池の周りの森を、ぐるりと散策してみましょう。

地図

 

白山神社の画像 【白山神社】
 今回は、大船駅からバスで白山神社前バス停へ向かいます。まずは、今泉の鎮守・白山神社へお参りしましょう。山懐にある参道の脇には、市の有形民俗資料の庚申塔や、馬頭観音が並んでいます。石段を登ると、鳥居の前のモチとシイの木の間に、長さ6メートルもの注連縄がかかっています。毎年1月8日に行われる大注連祭でつくられた「むかでしめ」です。白山神社は源頼朝が京都の鞍馬寺に参ったときもらい受けたという毘沙門天像をまつり、大ムカデは、ここの守護神とされています。ムカデはヒルなどを退治する稲作の神ともいわれ、ムカデを模したしめ縄は、辺りで唯一残る田んぼのわらを使い、氏子の方々がつくったもの。田んぼの恵みと共にあった人々の暮らし、その自然を尊ぶ心がにじむ、里山の神社です。

 

称名寺の滝の画像 【称名寺の滝】
 ここで散在ヶ池に行く前に、いったん車道を東へ向かいましょう。ゴルフ場の看板やごみ焼却場の前を通ってさらに進むと、六地蔵のある称名寺の門に着きます。門を入り下っていくと、次第に川の上流に近づき、手前に小さな女滝、奥に大きな男滝が現れます。滝つぼのそばに下りることもできます。森の中にぽっかりと開いた空間に水音が響き、ここだけ時間が止まっているかのよう。弘法大師が仙人のおつげを受け不動明王に祈ったところ水が湧いたという伝説があり、今泉という地名の由来ともなっています。昔、人々はこの水を田畑に引き、耕作を行っていたとか。尽きることなく流れ続ける滝を見ながら、人々の命を支えてきた水の力に思いを馳せます。

 

せせらぎの小径の画像 【散在ガ池森林公園】
●せせらぎの小径
 車道へ戻って東へ進み、分岐点を南へ登っていくと、右手に散在ガ池森林公園の看板があります。門を入り、右手の「せせらぎの小径」へと下っていきましょう。ホタルもすむという湿地帯は、切り立った崖に囲まれ、幽邃な雰囲気。渓谷を眺めながら、木道を歩きます。6月ごろなら、湿った土の上などに虹色のハンミョウがいるかもしれません。光沢のある美しい羽が魅力的ですが、するどい牙をもつ、肉食の昆虫です。近づくと、軽やかに飛び立って道の前方に止まることがよくあり、「道おしえ」とも呼ばれています。

 

散在ガ池の画像 ●散在ガ池
 丸太の階段を上ると、深い緑の散在ガ池が現れます。周囲772m、面積約12.8ヘクタールの池の水面に木々が枝を垂らし、静かな湖畔という印象。池のほとりでは、春にはサクラ、秋には紅葉が楽しめます。冬には池にカモが訪れ、運がよければ、オシドリと出会うこともできるかもしれません。池は現在護岸され、柵で囲われていますが、その中心付近は急に深くなっており、かつては水死事故が起きることもありました。人々は、周囲の警告を聞かずに大ウナギに会いたいと池に向かい、帰らぬ人となった神次の悲話を語り、子どもがこの池に近づかないようにしたといいます。
 この一帯は、かつて人々が馬のまぐさを刈る入会地でした。江戸末期、称名寺の住職がこの域を大船、岩瀬、今泉の3部落に無償で分与していたため、この山を「散在の山」と呼ぶようになったと伝えられています。
当時、大船・岩瀬に千石といわれた水田が広がっていましたが、水不足で争いが絶えなかったことから、入会地に堰を設け貯水池がつくられました。後に周囲の宅地化が進む中、散在ガ池は県と市により公園として整備されました。開発に伴い荒れた土地にはさまざまな樹木が植えられ、今では野鳥も多く訪れます。

 

イワタバコの画像 ●馬の背の道
 管理塔の裏から、散策路「馬の背の道」を上っていきましょう。左手の崖の上から、たくさんの緑色の葉が垂れ下がっています。6月に、薄紫色の星型の花を咲かせるイワタバコです。入り組んだ谷戸の多い鎌倉では、このように岩盤が露出した崖が多くみられます。中でも、陽が当りにくく湿った岩盤は、イワタバコが生えやすい環境とされています。谷あいの切通しなどでしっとりと花開くイワタバコは、鎌倉らしさを感じさせる植物の1つ。茎や葉を触ってみると、毛が生えており少しフワフワした感触です。鎌倉でよく見られるものは毛が多く、細かい分類ではケイワタバコと呼ばれています。その土地ならではの環境がはぐくんできた植物たちは、かけがえのない宝物。これからもずっとこの地で花開くことができるよう、大切に見守りたいものです。

 

●頂上〜散策路一周
 尾根の一番上からは、住宅地を抜けて天園ハイキングコースへ出ることもできます。住宅地へ出ずに森の散策路をそのまま進めば、池を巡り、池の入り口に戻ることができます。冬にはカモが訪れ、鎌倉では珍しいオシドリが見られることもあります。ベンチで一休みしたら、バス停へ向かいましょう。大船駅に戻るバスの車窓からは畑も見られ、今なお、森から流れ出た水の恵みが、人々の暮らしと結びついていることに気づきます。
 住宅地の合間に残された、ため池の跡、散在ヶ池。残された森や田畑が辺り一面に広がり、生き物たちが自由に行き来していた昔に思いを馳せれば、大切にしたい地域の風景が見えてくるかもしれません。

 

【交 通】大船駅よりバス→白山神社バス停下車
【行 程】白山神社(徒歩15分)→ 称名寺(徒歩15分)→ 散在ヶ池散策路一周(徒歩1時間)→散在ヶ池出発(徒歩約5分)→今泉不動バス停
【トイレ】大船駅、散在ヶ池森林公園にあり

※引用文献…鎌倉市教育研究所編,2000.『かまくら子ども風土記』.鎌倉市教育委員会


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