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長谷〜源氏山
ハイキング


 春に爛漫と咲き誇り、散りゆく様にも風情があるサクラ。
古くから花といえばサクラを指すほど、
日本人には馴染み深い花です。
ここでは長谷の大仏の裏から源氏山まで山道を歩き、
社寺などに植えられた園芸種のサクラと、
野山に生えるヤマザクラの両方を楽しみましょう。

地図
 

【長谷かいわい】
 まずは江ノ電で長谷駅へ。道を北に向かって歩き、長谷観音のある長谷寺や、大仏さまのある高徳院の前を抜けていきましょう。サクラの時期なら、お寺に立ち寄り、お花見を楽しんでみるのもいいでしょう。サクラと一緒に拝めるのも、露座の大仏ならではのことでしょう。
 サクラには多くの種類がありますが、まちに植えられている代表的なものは、ソメイヨシノです。ソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンの自然交雑種で、江戸時代に染井(江戸)の植木屋から世に広がったため、この名があります。葉が出る前に一斉に花を咲かせ、潔く散りゆく様は人々に愛され、段葛や鎌倉山などの名所にも、このソメイヨシノが多く植えられています。

大仏ハイキングコース入口の画像 【大仏さまの背後に連なる山道へ】
 高徳院の門を出て、大通りを北西に進むと、新大仏坂トンネルの前に出ます。脇から伸びる階段を上って、いよいよ山道へ。ところどころで、網目のように張り巡らされた木の根の造形を目にします。鎌倉では表土が薄く、岩盤が地表近くまで露出しているところが多くあります。地中にもぐれない木の根が、地表に浮き出てくる傾向があるのです。斜面で成長した木が自らの重みを支えきれなくなり、根こそぎ倒れることも少なくありません。鎌倉の山に、巨木といえるほど大きな木が少ないのは、そのためと考えられています。木の根を踏みつけて傷めないよう、優しく歩いていきましょう。

 

萌黄色の山の画像 【ヤマザクラ】
 途中、木々の間からパッと視界が開け、白、サクラ色、紅色、萌黄色から深緑まで、色とりどりに塗り分けられた山々が目の前に広がります。実を食べた鳥が種を運び、それぞれの地に根付いて、同じサクラでも少しずつ異なる花の色を生み出してきました。芽吹く木々の芽の色も、千差万別。春の山で、いったいいくつの色が見つかるでしょうか。  鎌倉の山でよく見られるヤマザクラは、ソメイヨシノとは違い、花と一緒に赤みがかった葉が出るのが特徴。緑の葉が出るのは、オオシマザクラです。どちらのサクラも昔は炭や薪の材料として用いられてきた、里山の木です。  鎌倉市の木は、ヤマザクラ。ここではヤマザクラとオオシマザクラの総称で、市民の投票により選ばれ、親しまれてきました。

 

化粧坂の画像 【化粧坂】
 森の道を抜け、海の展望などを楽しみながら進んでいくと、源氏山公園に着きます。そのまま東へ歩き、鎌倉七切通しの1つ、化粧坂を訪れましょう。侵食された土や岩がたおやかな曲線を描き、古いたたずまいを残す急坂です。化粧坂という名が付けられたのは、付近に遊女が住んでいたためとも、平家の大将の首実検をする際、ここで化粧をしたためともいわれています。足元の粗い砂には、風化した白い貝がたくさん埋もれています。約200万年前の深沢凝灰岩質粗粒砂岩層という地層のもので、ウニのトゲやサメの歯の化石も発見されています。化粧坂は、国指定の史跡です。掘り返したりせず、そっと観察させていただきましょう。化粧坂から住宅地へ降りることもできますが、ここでは再び引き返して登り、元の道へ戻ります。

 

頼朝像とサクラの画像 【源氏山公園】
 道をそのまま進むと、頼朝像がある広場に出ます。春、像の周りは、お花見の人々で大賑わい。静かに自然と対話したい方は、さらに東側に進み、右手から細い階段を登っていきましょう。やがて、標高92.6メートルの源氏山の山頂に出ます。源氏山は、源義家が前九年の役で奥州へと向かう際に、源氏の象徴である白旗を立てて勝利を祈願した場所で、別名白旗山とも呼ばれています。山頂は、樹木に囲まれ、ひっそりとしています。高みから舞い降りたヤマザクラの花びらで、地面や小さな石のほこらが、雪化粧されたように白く染まることもあります。

 

銭洗弁天の画像 【銭洗弁天】
 右手の岩盤に掘られたトンネルと鳥居の列をくぐると、銭洗弁天に出ます。老人の頭にヘビの体をもつ水の神、宇賀福神をまつる神社で、洞窟には鎌倉五名水の1つ、銭洗水が湧いています。源頼朝が、かくれ里の谷に湧く水を用い神仏を供養せよとのお告げに従い社を立てると、災害や貧困が治まったとか。後の執権、北条時頼が繁栄を願って銭を洗い、霊水でお金を洗うと倍になるとの伝説が広まりました。源氏山一帯の森から流れ出る水は、今も人々の信仰を支えています。

 

銭洗弁天の画像 【佐助稲荷神社】
 銭洗弁天前の入口の前に戻り、畑を見ながら坂を下りましょう。佐助稲荷を示す石碑に従って曲がると、佐助稲荷神社の赤い鳥居の列が見えます。この脇の谷戸は、有志の市民の皆さんが、地域の多様な生き物を守るために、保全活動をしているところ。谷底の湿地や茂みも、自然な状態で残されており、小鳥の姿も多く見られます。階段を登り、佐助稲荷神社にお参りしましょう。
 「佐助」の名は、源頼朝が幼いころ、「助殿(すけどの)」と呼ばれていたことにちなみ付けられたといわれます。頼朝が伊豆に流された際、夢枕に翁に姿を変えた鎌倉の神が立ち、平家討伐の挙兵をすすめたといい、後に鎌倉入りを果たした頼朝が、お告げに感謝して建てたのがこの神社です。佐助稲荷の使いは白ギツネとされ、境内には農業の神でもあるキツネの像が数多くまつられています。境内には水や石をまつるほこらもあり、古来の自然信仰がうかがえます。
 この辺りでは、タイワンリスの姿がよく見られます。もともとこの地にすんでいたものではなく、江ノ島植物園で飼われていたものが逃げ、野外で繁殖したものといわれています。近年、増えすぎて木々の食害などが問題となっており、えさをやることは禁止されています。

 

鎌倉市役所前ビオトープの画像 【鎌倉市役所前のビオトープ】
 元の道へ引き返し、南下していきましょう。道沿いには、老舗のくずきり屋さんもあります。道をもう少し進み、左折して佐助トンネルを抜けましょう。
 鎌倉駅に着く前に、鎌倉市役所の玄関前に立ち寄ると、自然の草が生えた池があります。ここでは、「鎌倉メダカ」が守り育てられています。
 かつて鎌倉の平地一帯では、山から流れ出た水を使い、田畑が営まれていました。田んぼや小川には野生のメダカもいましたが、開発が進んですみかを失い、野外では絶滅してしまいました。その前に佐助に住む方が保護していたメダカを、市が譲り受けて保護・増殖しているものです。この池は、2001年度に、近隣の小学生の協力で扇川のセリなどが移植され、地域の水辺環境を再現するビオトープ(=ドイツ語で、野生生物の生息空間の意味)として再整備されました(写真)。
 鎌倉市役所からは、5分足らずで鎌倉駅に着きます。
 長谷から鎌倉に抜ける間に、春のサクラをはじめ、さまざまな生き物たちと出会えるこのコース。萌え出る木々の芽や花々、小鳥のさえずりにふれるうち、自然の生命力が、体に満ちてくるようです。

 

【交 通】江ノ島電鉄線長谷駅より徒歩
【行 程】江ノ電長谷駅(徒歩10分)→高徳院:大仏(徒歩50分)→源氏山公園(徒歩5分)→銭洗弁天(徒歩20分)→佐助トンネル(徒歩10分)→鎌倉市役所(徒歩5分)→鎌倉駅
【トイレ】長谷駅、源氏山公園、鎌倉駅にあり

※引用文献…
鎌倉市教育研究所編,1998.『鎌倉の自然』鎌倉市教育委員会
鎌倉市教育研究所編,2000.『かまくら子ども風土記』.鎌倉市教育委員会


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