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鎌倉中央公園
鎌倉中央公園は、その名の通り鎌倉市のほぼ中央に位置する23.7haの公園です。
緑化推進の拠点、
田畑での農業体験をはじめとする余暇活動の場、
さまざまな生き物のすむ自然環境や景観を保全する場、
防災公園としての機能もある総合公園です。
谷戸の環境が保全されている、昔ながらの里山という印象。
市民活動も盛んです。
ここでは、公園を1周、歩いて巡ってみましょう。
【ししいし】
まずは、大船駅からバスに乗り、山崎バス停で下車。バスの進行方向から見て左・南側へと伸びる平らな舗装路を歩いていきます。しばらく行くと、曲がり角に鎌倉中央公園を示す看板が出ています。ここを曲がり、川沿いの道を進んでいきましょう。奥へと進むにつれ、辺りの緑が次第に濃くなっていきます。一番奥で、鎌倉中央公園山崎口の門が迎えてくれます。さっそく入っていきましょう。
入口のそばには、「ししいし」と呼ばれる、獅子の形をした大きな岩があります。この石は、かつてこの山崎の谷戸が公園になる前、一面に田んぼが広がっていたころからあったものです。村の田んぼを見守るかのように、悠々と座り続けてきた「ししいし」。今は公園に来た子どもたちが、楽しそうに登って遊ぶ様子が見られます。
【カツラの木】
道を少し上ると、のびのびとした芝生の広場に出ます。一番下に小さな池があり、その横にちょっとした林があります。この木は、鎌倉彫の原料となるカツラという木です。鎌倉の山に自生する木ではなく、鎌倉彫には、主に、木目の締まった北海道産のものが使われています。 カツラの葉は秋になって黄色く色づくころ、べっこう飴のような甘い香りを漂わせます。秋に訪れたら、ぜひ香りを楽しんでみてください。
【小川】
カツラの林の奥に、山際を流れる小川があります。子どもでも降りられる深さですので、ちょっと覗いてみましょう。「マシジミ」という、貝殻の裏側が白いシジミ貝や、ホタルの幼虫のえさとなるカワニナ、サワガニの姿も見られます。目の細かい金属製のザルや網で水底の落ち葉や泥ごとすくい、水の中でふるうと、トンボのヤゴも見つかります。生き物の観察が終わったら、もともといた場所に返してあげましょう。
【池と湿性花園】
広場の上にある池は、かつて、辺りに広がっていた田んぼのため池でした。初夏から秋、真っ赤なショウジョウトンボや淡い青のシオカラトンボ、黒色の胴で真ん中だけが白いコシアキトンボなどが飛び交う様子が見られます。ときに魚を狙うコサギや、コバルトブルーのカワセミに出会えることもあります。
周囲の林や花壇からの有機物、コイのえさなどで、池は富栄養化が進んでいます。水中の酸素が不足し、夏には水が腐ったり干上がったりする可能性があることから、鎌倉自主探鳥会グループの皆さんが池の水抜きをして、汚れた水とヘドロの一部を取り除いています。このとき鎌倉市緑のレンジャー(ジュニア)が生きもの調査をし、ギンブナやヨシノボリ、クチボソ、マルタニシなどが見つかっています。ただし、アメリカザリガニやブルーギル、ブラックバス、ミシシッピーアカミミガメなどの外来種も少なくありません。こうした中、1年に1度、水を減らす機会に野鳥が訪れ、外来種を食べて減らす効果もあるといいます。
「上の池」と「下の池」の2つの池の間に、湿性花園があります。夏に半分お化粧をしたように白い葉をつけるハンゲショウなど、湿地の植物が植えられています。
上の池の前には、鎌倉中央公園管理事務所があります。公園の地図や、園内の行事に関する情報が得られ、図鑑なども閲覧できます。
【子どもの森と疎林広場】
池のそばの道を上がると、子どもの森に出ます。ここにも広場があり、奥の林の中で遊ぶこともできます。
さらに道を上っていきましょう。やがて、頂上付近の疎林広場に出ます。小さな畑では、麦やサツマイモなどが育てられています。ベンチで一休みして休憩したら、森の道を下っていきましょう。
【田んぼ】
やがて、谷戸あいに広がる田んぼが見えてきます。どこか昔懐かしい、心和む風景。この田んぼは、「鎌倉中央公園を育てる市民の会」の皆さんが中心となり、自然環境の保全や農文化の継承を目的として、市と協働で守り育てている昔ながらの谷戸田です。「市民の会」には田んぼ班、畑班、雑木林管理班、農芸班、自然遊び班などがあり、参加するボランティアの方々が、爽やかな汗を流していらっしゃいます。鎌倉も、昔はこうした田んぼが一面に広がっていたといいますが、今では市内の田んぼは5haほどになってしまいました。人が長年、山のマキなどを取ることで手入れされてきた雑木林や、田んぼを耕作することで保たれてきた水辺域。こうした環境に適応した野生生物は、すみかを失いつつあります。山崎の谷戸では、今も早春になると雑木林にタチツボスミレが咲き乱れ、春に水が溜められる田んぼには、カエルの声がにぎやかに響きます。初夏の夜には、ホタルの光も見られます。長い間、地域で培われてきた人と自然の共生の姿が、今もこの谷戸には生きています。
【谷戸底の湿地】
田んぼを一周したら、西側に向かって歩きましょう。農家風休憩舎を通り過ぎると、道のわきに、森からしみ出た「しぼり水」が溜まってできた湿地が広がっています。9月ごろには、小さな白い花が一面に咲き、お花畑のよう。ミゾソバというソバの仲間で、こうした湿地に生える植物です。10月ごろには、こうした草の草紅葉が足元に広がります。
今では貴重になった谷戸底の湿地や、そこにすむ生き物たちを守るため、有志の市民ボランティアが、「エコアップ」と称し保全活動を続けています。湿地の環境はとても繊細で、足で踏み固めると水がしみ込みにくくなり乾燥化が進んでしまうので、道から眺めるだけにしてくださいね。
11月の終わりになれば、ハゼの木が赤く紅葉します。鎌倉の山では赤く紅葉する木はそれほど多くなく、ハゼは谷戸に秋の彩りを添えてくれます。黄土色のハゼの実は、和ろうそくの原料としても知られています。ただし、ハゼの葉はかぶれることがあるので、触らないようにしましょう。
【しし石そばの池】
もう少し進むと、小さな池があります。早春にはアカガエルなどが卵を産み、オタマジャクシを観察することもできます。現在、日本の多くの田んぼでは、機械を中に入れて効率よく作業できるよう、圃(ほ)場整備を行い、機械を入れる前の冬の間に田んぼの水を抜いてしまうところが多いようです。こうした冬の間に水の無い田んぼでは、2月ごろ卵を産むアカガエルは、繁殖することができません。一方、鎌倉で営まれてきた田んぼの多くは、谷戸合いの狭い土地で、機械を入れるのが難しく、圃場整備が比較的進みませんでした。冬の間も水の溜まっている湿田や湿地が残されてきたため、今もアカガエルの姿をところどころで見ることができます。
池の先では、最初に見た「しし石」が迎えてくれます。これで、鎌倉中央公園を一周をしたことになります。同じ道を引き返し、バス停に戻りましょう。
谷戸は鎌倉の典型的な地形であるものの、今や谷底の水辺まで保全されているところは貴重になっています。大勢の人の力で、樹林地や田畑、草地、池、小川など谷戸の自然が一体的に保全されているこの公園では、それぞれの環境に適応したさまざまな生き物たちとふれあうことができます。ぜひ皆さんも気軽に訪れて、四季折々の自然と触れ合ったり、自然を守り育てる行事に参加したりしてみてくださいね。
【交 通】
・JR大船駅よりバス→山崎バス停より徒歩15分(ここで紹介したコース)
・湘南モノレール湘南町屋駅より徒歩12分(登り坂です)
・鎌倉駅よりバス→鎌倉中央公園バス停下車(本数は少ないです)
【行 程】鎌倉中央公園1周で、約2〜3時間
【開園時間】午前8時30分〜午後5時
【トイレ】管理事務所ほか園内5か所にあり
【公園についての問い合わせ】鎌倉市公園協会…TEL45-2750
※参考資料…鎌倉市公園協会ホームページ